一般社団法人リノベーション協議会(東京都渋谷区・理事長:山本卓也)は、 優良なリノベーションの品質基準を満たす『適合リノベーション住宅(R住宅)』制度において、 省エネリノベーションの普及および標準化を目指し、 新たに、 一定の省エネ基準を満たしたリノベーションマンションに発行される『R1住宅エコ』基準の策定を行い、 2022年6月より登録を開始いたします。
新基準策定の背景
政府は、 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、 2030年度に「家庭部門」のエネルギー由来のCO2排出量を2013年度比で66%削減する目標を掲げています(※1)。 住宅対策の方向性としては、 2030年に「新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保され、 新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていること」、 2050年に「ストック平均でZEH・ZEB基準の省エネ性能が確保され、 導入が合理的な住宅・建築物において太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となること」という目指すべき姿を描いています。 この住宅のあり方の実現に向け、 2025年までの省エネ適合基準への義務化、 2030年までの省エネ基準のZEH水準への引き上げといった施策が予定されています。
一方で、 現在の住宅ストックのうち現行の省エネ基準を満たしているものは10%程度しかないと言われています(※2)。 そんな現状を受け、 当協議会では、 住宅ストックの省エネ化がカーボンニュートラル実現に向けて必要不可欠であると考え、 業界として先行して省エネリノベーションに取り組み、 いち早く住宅ストックの断熱化、 省エネリノベーション住宅の普及推進を図るために「R1住宅エコ基準」の策定を実施しました。
※1【出展】首相官邸「地球温暖化対策推進本部」
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202104/22ondanka.html
※2【出展】国土交通省「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」
https://www.mlit.go.jp/common/001318639.pdf
『R1住宅エコ』基準について
- 基準は外皮平均熱貫流率(Ua値)とし、 最低基準を住宅性能表示制度における断熱等性能等級4の要求値とし、 性能値が高いものについては、 3段階の★マークにてその性能を表示する。
- R1エコ基準★(ワンスター)、 R1エコ基準★★(ツースター)、 R1エコ基準★★★(スリースター)
- 登録に当たっては、 外皮平均熱貫流率(Ua値)を求めた計算書や画像をデータ登録することを必須とする。
- 省エネの基準だけでなく、 当然ながら優良なリノベーションの基準である『R1住宅』基準を満たす。
※3 地域区分6地域(東京等)の場合
※4 2022年10月施行予定
『R1住宅エコ』基準の冷暖房負荷の削減効果
『R1住宅エコ』は、 家庭で消費するエネルギーの約28.6%(※5)を占める冷暖房負荷を削減することが可能です。 例えば、 国土交通省の試算によると、 S55年(1980年)基準の断熱性能の住宅をR1エコ基準★と同等程度の断熱等級4へリノベーションすると冷暖房エネルギー消費量が約35%削減、 H4年基準の断熱性能の住宅では冷暖房エネルギー消費量が約24%削減されます。 さらに、 「HEAT 20」によると、 R1エコ基準★と同等程度の断熱等級4の住宅を、 R1エコ基準★★と同等程度のUa値である「G1」基準へリノベーションすると年間暖房負荷が約40%削減、 R1エコ基準★★★と同等程度の「G2」基準へのリノベーションでは、 年間暖房負荷が約55%削減されます。
※5【出典】資源エネルギー庁「令和元年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2020)家庭部門のエネルギー消費の動向
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020pdf/whitepaper2020pdf_2_1.pdf
『R1住宅エコ」は、 快適で健康にも効果的
断熱は、 省エネ以外にも、 快適的で健康的な暮らしに貢献します。 部屋ごとの温度差が小さくなり、 「寒い・暑い」を感じにくくなり、 最小限の冷暖房で済むため、 快適性が高まります。 また、 結露を抑えるため、 アレルゲンとなるカビやダニの発生が抑えられます。 また、 風邪をひきにくくなったり、 ヒートショック(※6)対策にも効果的です
※6 寒暖差により血圧の急激な変動が原因で起こる。 「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(消費者庁)によると、 入浴中の急死による死亡者数は、 交通事故死者数を上回る。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042/assets/consumer_safety_cms204_20201119_02.pdf
リノベーション協議会 会長 内山博文コメント
日本の住宅の省エネ性能については、 世界的に見てもその基準や考え方が遅れていると言われております。 化石燃料をいかに消費せずにエネルギーの自立を目指すのはSDGsの観点からも急務であり皆様の生活をより豊かなものへと導いてくれるはずです。 既存ストックのリノベーション住宅の世界でも断熱化省エネ化を推進することで、 住宅ローンの金利優遇や税制優遇など事業者や消費者メリットなどにもつなげるように推進を図ってまいりたいと思います。
R1住宅とは
区分所有マンション専有部に関する品質基準を満たしたリノベーション住宅です。 給排水管や電気、 ガス、 防水、 下地などを重要インフラと定め検査基準を設定。 重要インフラは新規更新・既存流用に係らず、 最低2年の保証を義務付けています。 工事の内容は図面とともに住宅履歴情報として保管され、 「R1住宅適合状況報告書」が発行されます。
リノベーション協議会は、 今後も優良なリノベーション住宅の普及浸透を推進し、 既存住宅流通の活性化に寄与してまいります。 そして、 リノベーションによる既存住宅の性能や価値の再生・向上によって、 住まいを求める人が「自分らしく」「無理なく」「自由に」住まい選びが出来る市場をつくり、 地球環境にやさしく、 真に豊かな暮らしの実現に寄与してまいります。
一般社団法人リノベーション協議会について
消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、 既存住宅の流通を活性化させることを目的に、 2009 年7 月に発足したリノベーション業界団体です。 現在、 業界・業種の枠を超えた846社(正会員628社、 賛助会員202社、 特別会員4名・9法人・3自治体)が参画し、 優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅」を定め、 建物タイプ別に品質基準を設定、 普及浸透を推進しています。 区分所有マンション専有部に関する品質基準を満たす「R1住宅(アールワンジュウタク)」、 区分所有マンション共用部も含む品質基準「R3住宅(アールスリージュウタク)」、 戸建住宅の品質基準「R5住宅(アールファイブジュウタク)」が運用されており、 適合リノベーション住宅発行件数は、 累計62,909件(2022年4月12日現在)。
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